画像:photoAC熊澤充さん
自己実現に必死だった時期
自己実現といえば、マズローの5段階欲求。
衣食住がそれなりに満たされている場合、「周囲に認められたい」という承認欲求を求めて生きている人が大半なのではないでしょうか。
少なくとも、わたしは、未だにそうです。
20代~30代の頃のわたしは、まさに承認欲求の塊でした。
認めてもらいたい、でも、認めてもらえない自分に苦しんでいたからこそ、認めてもらうための努力を惜しまず、いろんな意味で、エネルギーは高かったように思います。
そんな頃の自分が、なりたい自分になるために、必要だった出会いがありました。
自己実現に必要だった出会い
40代後半になって、やっと、わたしは、若かりし頃に思い描いていた自分に出会うことができました。
10代の頃は特に夢と言えるものは何もなくて、20代になって、漠然と「こんな風になりたい」というイメージを持ち始めました。
30代は、それを追い求めるのに必死で、40代後半になった今、やっとある程度、その時に思い描いていた自分に出会うことができました。
今の自分に出会うには、ある人との出会いが必要でした。
それは、オーストラリア、シドニーにワーホリで降り立った半年後、1999年5月のこと。
かれこれ21年前の出来事です。
シドニーの青い海と青い空に感動したのもつかの間、わたしはどん底に落ちました。
何のあてもなく、とりあえずオーストラリアに降り立ったわたしは、英語もパソコンも、なんにもできなくて、どこに仕事を探しにいっても門前払い。
誰も自分を必要としてくれなくて、それどころか、英語がほとんどできなかったから、ろくに買い物さえもできなくて、
「わたしには、何の価値もない」と思い悩むほど、棒にも箸にも引っかからない状態で、小さな子供でさえできることが自分にはできていない気がして、完全に自信喪失に陥っていました。
そんな、何の取り柄もなく、何の使いものにもならなかったわたしを、拾ってくれた人がいました。
今の自分があるのは、その人のおかげといっても過言ではありません。
英語もパソコンも、それこそ、社会人としての常識やマナーなどを時間をかけて教えてくれて、そして、今まで見たことがなかった楽しい大人の世界を見せてくれました。
彼女が教えてくれたこと
わたしを拾ってくれた上司(日本人女性)が教えてくれたこと。
それは、自分の頭で考え学ぶということ。
ポンコツだったわたしですが、彼女が特別何かを手取り足取り教えるということはなく、
「まずは自分でやってみて」
と完全に放置プレー。
ある意味、とても厳しい方でした。
わたしが自分なりに考えて「つくってみました」という成果物については、彼女が納得するレベルに仕上がるまでは、何度でもダメ出しをくらう日々。
社内回覧メモひとつをとっても、出来栄えに「美しさ」を求められました。
今思うと、よくもまぁ、あんなにダメ出しをしてくれたなあぁと、思います。
ダメだしの回数は半端なかったけど、辛くあたったり、ひどい叱り方などはせずに、笑いながら、「これ、何言いたいのかさっぱりわかんない笑」という感じ。
そして、手書きで、「ここがこうだから、ダメなのよ、こうしてみたら?」と、いつもアドバイスをくれました。
わたしを拾ってくれた企業は、某大手グローバル金融企業で、彼女は企画課の課長でしたので、優秀エリートそのもの、そして、多忙だったのは間違いありません。
ポンコツなわたしの教育に、付き合っている暇なんてなかったはず。
「猫の手でも借りたい」というほど忙しかったからこそ、アシスタントを急募していたわけで、今となっても、なぜあの時、ほとんど何の役にも経たない私を採用してくれたのだろうと不思議に思うほど。
わたしを採用してくれた背景は未だ謎ですが、彼女が拾ってくれたおかがで、わたしは、時間をかけて、何度もダメ出しを食らいながら、同じことをひたすらリピートし、英語やパソコン、いろんなことを吸収していくことができました。
そのおかげで、わたしは自己実現に必要不可欠なスキルを徐々に習得していくことができました。
わたしの自己実現には、なんだかんだ言って、20年ぐらい時間がかかってしまいました。
自己実現に必要だったスキルは、
〇英語と国際感覚
〇自ら学ぶ力
〇自信
この3つ。
英語でのコミュニケーション能力をつけることが一番時間がかかって、まともに使える程度になるまで、5年間の海外生活と現地での仕事経験が必要でした。
英語力をつけるには、
〇真似ること(コピー)
〇反復使用
これに尽きます。
国際感覚は、英語ができるようになるのと並行的に見についていきました。
最後に自信。
これは、どん底から、自力で這い上がったからこそ、手に入れたもの。
自信とは、自分を信じる力。
「やれば、できる」
「為せば成る」という自信。
他の人と比べてどうのというのではなく、自分は何かしらできるという自信です。
実経験を通じて知り得たからこそ、自分を信じる力が芽生えました。
やっと振り返る時が来た
彼女の下で働くようになって、早7年ほどが過ぎた頃、わたしは、自分自身の夢実現に頭がいっぱいで、その頃置かれていた自分の環境や、彼女が今までわたしにしてくれたことなど、感謝する気持ちはあったけど、どこか、そっちの気な感じでした。
7年間お世話になった会社をあっさりと辞め、彼女に心からきちんと感謝の意を伝えることもせずに、あれよあれよといううちに、帰国することとなり、帰国後あっという間に10年という月日が流れてしまいました。
彼女の連絡先を紛失し、忙しさにかまけて、自分の目の前にあることばかりで精一杯で、帰国後、一度も彼女に連絡をすることもないまま、10年という月日を費やしてしまいました。
自分の居場所やキャリアにおいて、それなりの役職についた今、気持ちに余裕が出てきたからでしょうか、それとも、新たなターニングポイントなのでしょうか、彼女にお世話になった日々を、そして、ポンコツだった自分を頻繁に思い出すようになりました。
ポンコツだった自分を明確に覚えていて、そんな時期を思い出すにあたり、わたしを拾ってくれた彼女に対する感謝の気持ちが、胸がチクっと痛むほど溢れ出てきました。
きちんと御礼を言えてないこと、そして、10年間も音信不通で連絡を一度もしなかったことへの懺悔の気持ちでいっぱいにもなりました。
住所も、電話番号も、メールアドレスも手元になくて、わかっているのは名前だけでしたので、連絡する手立てもなく・・・。
どうにかして、彼女に連絡を取ることはできないだろうかと考えてたどり着いたのが、最近はじめたビジネス系SNS、LinkedIn。
ダメもとで名前を検索したところ、1件だけヒットしました。
顔写真はなかったものの、幸い、経歴を公開されていたので、間違いなく彼女であると確信が持てたので、SNSを通じて、自身のメルアドと共に彼女にメッセージを送ってみたところ、幸運にもメール連絡を頂くことができました。
普段は、SNSをほとんど使わないわたしですが、この時ばかりは、SNSというプラットフォーム、そしてLinkedInに感謝感激!
溢れ出る止められない想い
彼女に連絡がついたとなったら、もう大変。
身勝手なわたしは、どこまでも身勝手で、彼女に対する思いが、まるで恋する乙女のように溢れ出てきて、自分でも止めることができないほど、溢れ出てしまいました。
こんな感情、はじめて・・・。
まるで小さな子供が、母親とはぐれて、迷子になった後に、母と再会するような気持ち。
まるで小さな子供が、はじめてできたお使いについて、ママに誇らしげにたくさん話をしたい気持ち。
感謝の気持ちを伝えたいのと同時に、「わたし、こんなん、なりました!」と成長をほめてもらいたい気持ちもあったりして、なんとも表現しがたい感情に包まれました。
10年という月日は、とてつもない月日であるということを、彼女のお子さんの写真を拝見して心底実感しました。
とても小さかった女の子が、なんとも魅力的な大人の女性に成長していて、まるで浦島太郎になった気分です。
こんなにも長い時間が過ぎ去ってしまったのかと、改めて思いました。
心から何かを感じることができるのは、タイミングもあるのかもしれません。
ちょっと遅すぎましたが、わたしが彼女に心の底から感謝の気持ちを持てるようになったのは、彼女から出会って21年も経過してからでした。
また、心の底から感謝の気持ちを持てる相手というのは、それほど多くはないのかもしれません。
そういった人を1人でも持てたというのは、幸せなことなのかもしれません。
10年ぶりに彼女と接して
わたしは、21年前に出会った彼女の年齢を超えました。
年を重ねたせいでしょうか。
メールベースではありましたが、10年ぶりに彼女と接してみて、なんだか、勝手ながら、少しだけ、彼女のいるレベル(位置)に近づけたような気がしました。
もしかしたら、ただの気のせいかもしれないけれど、なんとなく、ちょっとだけ、自分の成長を客観的に感じられました。
相変わらず、一方的に自分の思いをぶつけてしまいましたが(←これは成長がみられない)、大きな心で受け止めてくれ、受け入れてくれた彼女に心から感謝しています。
もう、接点を持てないかもしれないと思っていたので、メールではあるけれど、彼女と意思の疎通ができて、自分の思いを打ち明け、感謝の気持ちを伝えられたことは、自分にとって、とても大きな出来事であり、また節目でもありました。
これからのわたしの目標
20代~30代に夢に見た以上の仕事をできるようになった今、今後10年、自分はどんな目標をもって生きていくのか、明確な答えがないまま、日々を過ごしていました。
でも、今、お世話になった、わたしの恩師のような人と再度接することができて、あらためて、今後のわたし自身の目標というか、目指したい方向性を認識することができました。
それは、
「今の自分がいるのは、あなたに会えたから」と、
わたしが彼女を恩師と思うように、わたしも誰かにとって、そんな風に思われる存在になりたい。
人は、人を通じて、幸せや充実感を感じる生きものなのかもしれませんね。
それでは、みなさま、have a nice day
by ちびまる