資金がなくても海外ビジネス展開は可能
大手企業であれば、資金もリソースも潤沢にあるケースが多いため、海外各地に自社の拠点を設け、全て社内で完結することができますが、中小企業の場合は、そうはいきません。
また、中小企業の場合は、社内に海外事業経験者が不在の場合も多く、どこから何に手をつけたらよいかわからないし、自分が経験していないことにお金を投じるのをためらいますよね。
わたしだったらムリです。
自分の知らない世界へ、大切な資金を投じることは怖いし、リスクが高いと感じてしまいます。
わたしが勤める会社も同じく中小企業であり、社内では、わたし以外にビジネスレベルで外国企業と商談を進められる人はいませんし、海外事業を経験した人材もいません。
中小の日系企業においては、海外事業を展開できる人材の確保が困難であり、海外事業展開が思うように進んでいかないという企業も多いのではないかなと思います。
ただし、社内に1人でも
〇コミュニケーション能力に長けている
〇ビジネスレベルの英語ができる
〇事業開拓に積極的である
という社員がいれば、その人材を上手く活用し、海外事業展開に必要な
〇情報の吸い上げ
〇情報の共有
〇情報の伝達
を関係者間でしっかりできさえすれば、あとはそこに、社内の製品およびサービスに関する知識と経験をのっけることで、海外事業展開は可能になります。
その情報伝達の役割を、私は今の会社で担っています。
情報が必要な人に、必要な情報を届けて、それをまた、必要な人に伝達をする、コミュニケーションさえ円滑にできれば、お金をかけなくても、海外ビジネスを広げることは可能です。
まずは動いてみる、これが大事だと思います。
資金を使わず、外部のリソースを使う
ビジネスで一番お金がかかるのは、「人」です。
人を雇うことは固定費が増えるので、雇った人が給与以上に働き、会社に利益をもたらすことができなければ、その人件費は損失の増加につながっていきます。
ビジネス展開に必要な優秀な人材を社員として雇うことは、コストが高い分リスクも大きいです。
高いスキルを持った人材ほど、当然のことですが高くつきます。
ちなみにわたしの場合は、海外事業担当者といっても、特別な専門スキルがあるわけではないですし、コミュニケーション能力に少々長けているだけなので、一般社員ですし、お給料も比較的穏やか、高給取りではないです。
わたしは、高給取りではないけど、生活は満たされていますし、仕事も楽しいので、ハッピーライフです。
なので、会社には、わたしを上手にたくさん使ってもらって、海外ビジネス拡大を目指してもらいたいな、と思いながら働いています。
契約社会の海外であれば、結果がでなければ、契約条件に従って数か月で解雇にすることもできるでしょうが、日本の場合は、一度社員として雇用してしまうと、なかなか解雇に踏み切れないというケースをよく耳にします。
外資企業において、高給取りの人材(経営層、もしくはセールス、マーケティングなどのフロント業務の人材)は、3ヶ月~6ヶ月で結果(数字)を出せなければ解雇されるケースも多いようです。
また、雇った人材が、どんなにスキルが高い人材でも、組織に上手くフィットするかどうかもわかりません。
最悪なのは、高給取りの上、自社の組織や風土にマッチせず、チームとして働けない=使いものにならない人を雇ってしまい、使えないけど、解雇できない=無駄な人件費(固定費)だけが継続的に発生する、という状況かと思います。
平社員のわたしでもわかることなので、経営者であれば誰でも予測ができることかもしれませんが、失敗しているケースもよく耳にします。
なるべく、自社の資金を使わず、海外事業展開をしたいものですよね。
じゃぁ、どうすればよいか。
外部のリソースを使うのが一番!と、わたしは考えています。
わたしだけの力では、海外の市場開拓なんて、到底できっこありません。
外部のリソースを使うといっても、外部のサービスを利用する=費用が発生する、コンサルタントや人材サービスではなく、他の会社の資産を使う=費用が発生しない、他の会社にあるリソース(ヒト・モノ・カネ)を使うということです。
個人的な独断と偏見ですが、社内の内部事情を理解していない、もしくは理解しようとしない経営コンサルにいくら多額のお金を払っても、結果は出ないと思います。
どんなに素晴らしい経営戦略や事業戦略を提案されたところで、それを実行する土壌(人材、経験、知識)が自社の組織になければ、ただの絵に描いた餅となります。
使いこなすことができないまま、ただの参考資料としてキャビネットに保管されてしまいます。
外部の経営コンサルタントは、所詮外部の人であり、事業そのものにかかわることもないし、何より、彼らの仕事はあくまで経営層の相談にのる、「こういうことをすれば、結果が出る」というアドバイスをすることであり、経営の舵取りまではしてくれません。
中には親身になって、一緒に組織改革や事業戦略にどっぷり関わってくれる経営コンサルタンドも存在するかもしれませんが、いずれにしても、そのサービスは高額であることは間違いないです。
多額の資金をかけずに、外部のリソースを使うかたちとしては、業務提携がそのひとつです。
契約書ひとつでスタートできます。
業務提携であれば、適切なビジネスパートナーを見つけ、協業する目的が明確であり、協業することによりお互いの利害関係が一致すれば、チームとして上手く協業できる可能性が大いにあります。
外国企業のパートナーを見つけるヒント
業務提携は、自社にとって、プラスとなるビジネスパートナーを見つけ、お互いの会社にとって、利益をもたらせる関係、WIN WINのビジネス関係が前提で取り交わされる企業間契約であり企業戦略です。
業務提携には、さまざまなかたちがあるかと思いますが、ここでわたしがフォーカスしているのは、自社製品・サービスの市場の開拓=海外市場におけるセールス&マーケティングです。
自社の製品やサービスを市場に導入し、顧客を開拓し、販売数、売上・利益を増加するための協業です。
業務提携で重要なことは、日々のオペレーションから、お互い確実な結果(売上・利益)を出していけることだと思います。
自社にとって有益なビジネスパートナーを見つけるには、
〇優先順位を多角的に考える
〇自社の組織特徴を理解する
〇協業先の条件を明確にする
この3つを考える必要があります。
優先順位を多角的に考える
外国企業のパートナーを見つけるといっても、まずは海外事業展開をするにあたり、自社にとっての優先順位を明確に持っておくことが大事になります。
まずは参入市場の優先順位を決める
参入もしくはフォーカスしたい市場はどの地域なのか、ということを決める必要があります。
海外事業といっても、海外(日本以外の全部)を一括りには考えることはできません。
地球は思ったより、広くて大きいものです。
まずは、地球上のどのエリアで事業展開をしたいのか、フォーカスをしたいのか、それを考える必要があります。
地球上のエリアを大きい順から考えると、
〇大陸ベース
〇地域ベース
〇国家ベース
〇都市ベース
でしょうか。
大陸ベースといっても、6大陸で分けるのではなく、ビジネス市場の観点で分けた大陸ベースです。
〇北米・カナダ
〇南米
〇欧州
〇ロシア
〇中東・中央アジア
〇南アジア
〇アフリカ
〇東アジア
〇東南アジア
〇オセアニア
という感じ、わたしはざっくり考えています。
地域ベースとは、例えば、多くの国々で成り立っている欧州地域をわけて考えるということです。
〇北欧4か国(スウエーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウエイ)
〇ベネルックス(オランダ、ベルギー、ルクセンブルク)
北米の例でいえば、
〇西海岸
〇東海岸
〇北米南部
〇北米中部 など
大きい大陸は、フォーカスする地域別に考えて細分化することもできます。
国家ベースや都市ベース、その名の通り、国別や都市別に参入する市場を考えることです。
ターゲット市場を詳細に考える
会社によっては、複数の事業を抱えています。
1つの事業の中でも、参入する市場やターゲット顧客が微妙に異なる商材を抱えている場合もあります。
海外市場にて事業展開するにあたり、
〇どの商材を
〇どの市場で
〇誰に買ってもらいたいのか
を考える必要があります。
言い換えれば、
〇注力商材の選定
〇注力市場の選定
〇ターゲット顧客の選定
をして、参入する市場を決める必要があります。
あれも、これも売利上げを伸ばしたい、という考えでは、販売戦略も中途半端になり、また、協業する相手先の選定も曖昧になります。
これでは結果は出せません。
自社の組織特徴を理解する
MBAの学びを通じて、痛感していることがあります。
それは、どんなに素晴らしい戦略を立てたところで、それを実行する土壌が組織になければ、何の役にも立たない、ということです。
よく聞く話で、MBAホルダーは頭でっかちで理屈ばかりで、使えない、メンドクサイということ。
それは、おそらく、自社の組織の特徴を理解しないまま、学んだことをそのまま当てはめようとするからではないかなと思います。
実際に使えない、身にならない、結果が伴わないうんちくは、耳障りなだけであり、唱えるだけではムダです。
わたしは幸い、MBAホルダーであっても、うんちくを達者に言えるほど、MBAで学んだアカデミックな内容は覚えていませんし、弁が経つほどのたいした頭脳も持ち合わせていないので、頭でっかちにはなれません。
どこの組織においても、できたてほやほやの企業でない限り、長年培ってきた組織風土がありますし、必ずしも、優秀、かつスーパー前向きな人材が揃っているわけでもありません。
マネジメントが上手くいっていない経営者から、時折聞く言葉があります。
それは、「全社員を、新しく取り替えたい」ということ。
それは、今いる社員の人たちが使えない、ということを意味するのだろうけど、社員を全取り換えしたところで、事業が成功するとは到底思えません。
今目の前にいる人達を上手く巻き込めず結果を出せない人が、どんなに優秀な人を集めたところで、たぶん、何も変わらないです。
もちろん、今ある資源でできることと、できないことは、明確にでてきます。
組織は、今ある人たちで成り立っているのであり、その人たちが作りあげてきた会社です。
その人たちの存在、そして、そこにいる人達が作りあげてきた資産を尊重した上で、事業の発展を目指していくこと、それが大事だと思います。
また、どんなに社内風土の改革に取り組んだところで、なかなか長年続けてきた習慣を変えることはできません。
組織の特徴をとらえた上で、組織内への働きかけや工夫をしながら、今ある組織の特徴にフィットする外国企業の協業先を探すのが、海外事業担当の役割であると考えています。
協業先の条件を明確にする
協業先を見つけるのは、結婚と同じ、だと思います。
結婚したことないわたしが言うのもなんですが^^;
お互いが共に生きることで豊かさを得る、という点について、同じだと思うのです。
わたしは、外国企業の協業先候補を考える際に、チェックポイントを設けています。
それは、
〇自社と同じサイズ感の企業であること
〇注力市場を熟知した現地企業であること
〇自社製品の販売を熱望していること
〇社長が国際ビジネス・営業経験が豊富であること
〇柔軟かつレスが早いこと
この5つです。
自社と同じサイズ感の企業であること
わたしの経験上での話しですが、サイズ感が大きく異なる企業間の協業は上手くいきません。
大手企業と中小企業の協業では
〇大手企業のルールは頑な
〇力関係が不均衡
〇スピード感が違う
という問題があります。
どうして大きい組織が相手となると、スピードが遅く、柔軟性に欠け、コミュニケーションも戦略実行も円滑に進みません。
大手企業は、
〇潤沢な資金
〇豊富なリソース
〇グローバルネットワーク
など、魅力的な要素をたくさん持っているので、大手企業と協業すれば、ダイナミックな販売展開ができるのではないか、という期待は大きいですが、現実はそう甘くありません。
大手企業にとっては、少しでも販売につながれば売上・利益の積上げになりますが、市場開拓したい中小企業にとっては、協業したからには
〇もっとリソースを割いてほしい
〇もっと市場情報を吸上げて欲しい
〇もっと販売スピードを加速して欲しい
という欲求があります。
大手企業が中小企業の商材を導入販売する場合、大手企業にとっては、one of them (たくさんある商材の1つ)にしかならず、導入商材の販売は腰掛けになる傾向が強くみられます。
そうすると、商材販売に対する温度差や溝が生まれます。
そうならないたいめにも、同じサイズ感の企業を選ぶというのは、とても大切です。
同じサイズ感の中小企業であれば、
〇社内ルールより実益優先
〇お互いを必要とする間柄
〇決定も実行も早い
です。
コミュニケーションのツールも、中小企業であれば、無料通話サービスを使って、ささっと顔を見て話し、直接話す相手が社長であれば、その場で「いいよ」とOKがもらえるので、決定・実行が早いです。
大手企業相手の場合、コミュニケーションのツールの使用でさえも、指定されたツールの使用しか許されず、また、話したい時に、すぐに顔をみて話をするという訳にはいきません。
注力市場を熟知した現地企業であること
「この企業はいいかも」と思った相手の場合、わたしは早い段階から、相手方の社長とスカイプ会議を段取りし、ざっくばらんに、できるだけの情報を聞き出すようにしています。
その時に、社長の人柄や、上手くコミュニケーションをとっていける相手かどうかも判断します。
また、相手側企業が、自社のターゲット市場に所在しており、注力したい市場の生きた情報を持ち合わせているかどうかを確認します。
現地に根づいた企業を選ぶ理由は、現地の文化・習慣や言語への対応能力が高いからです。
注力市場を熟知しているかどうかという点は、市場を理解する上でとても重要になってきます。
市場を知らなければ、有効な戦略は立てられません。
また、ターゲット顧客へのアクセスできるかということも確認します。
質問したことへ即答でき、かつ具体的な情報を惜しみなく出してくれる社長がいる企業との協業は、自社にとって有益となります。
自社の製品販売を熱望していること
熱意がなければ、人は動きません。
熱意が高いということは、自社製品の価値への評価が高いということです。
自社の製品を販売したいという熱意が伝わってこない企業との協業は、どんなに先方が市場を熟知し有能だったとしても、上手くいきません。
理由は、熱意がない=優先順位が低いからです。
優先順位が低ければ、人、お金、時間、労力を使ってはくれません。
ブランド力が高く、製品の吸引性が高い商材であれば、ほっといても売れるかもしれませんが、たいていの場合は、販売する努力をしない限り売れません。
自社の商材で売上と利益を上げたいという熱意とモチベーションさえあれば、販売促進のための知恵と工夫も出てきます。
社長が国際ビジネス・営業経験が豊富であること
中小企業の外国企業との協業を検討する場合、社長が国際ビジネスの経験が豊富であること、そして、営業能力が高いことを重視しています。
国際ビジネスの場合は、貿易が絡むケースが多いので、輸入に関する経験と知識が豊富でなければ上手くいかないですし、また、さまざまな国との取引経験を持っていれば、国によって、ビジネスの進め方も、スピードも異なってくるということを理解してくれます。
自国だけでなく、他国の事情への理解が高いというのは、取引をする上で重要になってきます。
また、国際ビジネス経験が豊富な社長の場合、英語が堪能であるため、コミュニケーションを円滑に図ることができますし、諸外国の企業取引先が多い企業ほど、信頼を一番に考えているため、与信のリスクも低いと、わたしは考えています。
社長が営業畑であり、営業の能力が高い場合、先方からの具体的な販売戦略提案を頂けることが多く、戦略の内容も現実的です。
社長自身の経験に基づく提案の場合、根拠の説得力も高く信頼できます。
何より、現地市場の現状を学ぶこともできますし、その国特有のセールス・マーケティングを学ぶこともできますので、わたしの個人的な能力開発にもつながります。
柔軟かつレスが早いこと
相手が中小企業の社長の場合は、大手企業とは異なり、商談のプロセスが非常に柔軟、かつスピーディです。
オーナー企業の場合は、ワンマンであることも多く、社長からOKをもらえばことは済むので楽です。
社会的なルールはもちろん遵守しますが、社内のルールよりも実益を優先させる傾向があるのも、取引先としてはやりやすいです。
また、レスポンスがとにかく早い企業は信頼できます。
お互い離れた場所での協業であり、信頼関係を構築していくには、メール、スカイプ、電話などで、たくさん話をすること、そして、レスポンスが早いということはとても重要になってきます。
わたし自身も、海外取引先からのメールには、原則、同日返信、遅くても翌日、すぐに回答を出せない場合は、その旨の連絡をいれ、いつ頃回答ができるのか、だいたいの目安を伝えます。
諸外国にチームを構築する楽しさ
社内に海外事業展開のリソースがなかったとしても、外部にチームを作ることは可能です。
それも費用はゼロ。
わたし自身も多くの国々の企業と商談をたくさん経験していますが、同様に、国際ビジネスを経験してきており、実際に事業開拓に携わっている人たちとのつながりを持つことは刺激的であり、またその人たちから学ぶ機会も多く、とても楽しく仕事をさせてもらっています。
国を超えて、優秀な人材、それもわたしよりもずっと人生経験もビジネス経験も豊富な素敵な人達とビジネスを通じて関わり合えることは、わたしの財産であり、また、仕事を超えて、友人関係の構築も可能である今の仕事は、わたしの天職だと思っています。
コツコツと協力者(協業者)を外につくってチームの輪を広げ、それを上手く横にもつなげていけたら、さぞかし楽しい世界が広がると考えています。
仕事は遊びのように楽しくなくっちゃ!
Byちびまる