専門家には、なれないわたし
専門家(スペシャリスト)になれないことを、ずっと自分の弱みであると思いこんでいました。
わたしは、特別な分野でスキルを磨いてくることをせずに、40代半ばまで生きてきました。
その時の運と機会に身をまかせ、やりたいことをまずはやってみる、という気持ちでさまざまな業界・業種・企業で仕事をしてきましたので、「この道なら誰にも負けない!」なんていう分野は何ひとつありません。
ある意味、No Planで生きてきた、といっても過言ではありません。
というわけで、わたしはスペシャリストにはなれないのです。
また、ずば抜けて、何か特別に、能力が高いという分野もありません。
英語ができるといっても、海外に長く住んでいただけで、通訳者や翻訳家のような英語のスペシャリストにはなれません。
だって、英文法に自信がないし、母国語の日本語でさえままならないのに、ましてや英語という多言語のプロになんてなれないです。
かといって、特別何かずば抜けて秀でるものがあるかというと、
う~ん・・・・・・・・
特別、思い当たりません。
何においても、普通です。
それは、小学校の通信簿と同じ。
わたしは、オール3の子どもでした。
特別、これといって、「〇〇ちゃんは、こんなことが得意で、誰よりも上手なんですよ~」なんて、家庭訪問で言われた記憶はなく、特別褒めるポイントがなかったのでしょう。
学校の担任の先生は、「オール3をとれるって、なかなかない、すごいことなんですよぉ~!」、
全て普通かなぁ~と言われているところを、バランスがとれているという褒めてくれた担任の先生には感謝しかありませんが、可もなく不可もなくというレベルでバランスが取れているって、どうなんだろう???と今でも考えてしまいます。
その言葉を聞いた母は、嬉しかったのか、どうなのか、よくわかりませんが。
わたしが専門家になれない理由
わたしが専門家になれない要因は、
強烈にはまる、大好きが見つけられない
ことだと思っています。
また、特別興味がないものに、貪欲に学ぶ気持ちになれない、というのがスペシャリストから遠ざかって生きてきたわたしの現状かと思います。
自分なりに自己分析してみると、今までの人生において何か特別に、
〇強烈にはまった!
〇好きで好きでたまらない!
〇四六時中そのことを考えちゃう!
〇3度の飯より好き!
な~んてものを感じたことがありません。
実は、この「夢中になれない自分」は、小中学生の時からのひとつの悩みでもあります。
わたしが中1の時は光GENJIが全盛期で、クラスの女子たちは、グループの中で誰それが好き♡、なぜ好きかというのを言い合うというのが常で、その話題で休み時間は持ち切りでわいわい盛り上がるのですが、わたしひとりだけ盛り下がるという状態でした。
なぜなら、特別に、誰それが強烈に好き、という感情が生まれなかったから。
そもそも、アイドルに興味がありませんでした。
というより、まったくと言っていいほど興味なしでした。
わたしは、誰とでも仲良くできたほうですが、どこかのグループに属するということができず、休み時間やお昼休みの時間、修学旅行など、何かとグループで集まるイベントは窮屈でしかなかったです。
どこのグループに属したらよいかわからなかったし、何より、なんとなく、自分がどこにいっても浮いている気がして、居心地が悪かったのです。
居場所がないっていう状態です。
どこにも属せないわたし。
人間的に欠陥があるんじゃないかと、本気で思い悩んだ時期もあります。
専門家になれないコンプレックス
わたしは、シドニーで生きていた頃、突然解雇になった経験があります。
1ヶ月の通知を頂いたものの、次の職探しは大変でした。
当時の仕事探しと言えば、リクルートエージェントへの登録か、職探しのサイトでのエントリーが主だったのですが、申請を出しても、出しても、閑古鳥。
100通以上ポチッと申請ボタンを押しても、1通も返事がきませんでした。
その時、わたしは気づかされました。
現地語が英語の国において、英語が第二言語であるわたしは、英語ができるというのは、強みではなんでもないのだと。
逆に、英語が第一言語である現地の人に比べたら、わたしの英語は当然のことながら劣るわけで、それじゃ、英語以外にわたしには何があるの?と考えた時に、何も見つからなかったんです。
外国においては、何かしら、専門職と言える知識や経験がある人は、比較的お仕事を見つけやすい傾向にあるように思います。
例えば、
〇日本食の料理人
〇IT業界のスペシャリスト
〇会計士
〇マーケティングの専門
〇トップセールス経験者
〇クレジットアナリスト など
企業側は、専門知識と経験を持たない外国人(永住権を持っていても、しょせん、外国人です)を雇うぐらいなら、オーストラリア国民(市民権を持つ現地の人)を雇います。
わたしには、そんな知識も経験もありませんでしたので、日系企業でのお仕事以外での仕事はまずなくて、現地企業における職探しは困難を極めました。
帰国してから、転職を考えたことがありますが、やはり、状況は同じで英語ができるだけではダメなのです。
英語ができるというよりも、求められるポジションでのキャリア経験とその実績が最優先であり、英語力は二の次です。
企業に求められる人材像は、
〇専門分野ひとすじでキャリア構築
〇転職歴が少ない人
〇専門分野で実績を残してきた人
で、専門分野でのキャリアあっての+αの英語です。
優先順位としては、専門分野でのキャリアと実績です。
わたしのように、専門を突き詰めず、あっちいったり、こっちいったり、なんとなく仕事してきましたーという人材は、あまり企業には好まれません。
自分の意志で進んできた人生だから、選んだ道になんの後悔もないのですが、現実的な話としては、専門知識と経験を積上げてこなかったわたしの市場価値は低いのです。
MBAを持っていようが、TOEIC900を超えていようが、海外長期滞在経験者であろうと、企業にとっては、そんなことはどうでもいいこと、なのです。
欲しいのは、1つの分野で専門知識と経験を積上げ、そして管理職としての実績を残してきた人なのです。
特に大手企業やグローバル企業には、その傾向が強いように思います。
そんなわけで、専門知識と経験をもたないわたしは、専門家になれない自分にコンプレックスを感じていましたし、市場価値が低い自分の経歴にも、少なからずコンプレックスを感じていました。
今の会社で、海外事業担当者として働くまでは。
専門知識がなくても、専門分野で仕事はできる
わたしはいま、ライフバイオサイエンス系の業界の研究開発型企業において、海外事業開拓(International Business Development)の担当者として仕事をしています。
めっちゃ理系で、専門性の高いです、会社としては。
わたしの経歴を考えれば、無縁と言っても良い世界です、本来は。
今の会社には、シドニー在中に拾われました。
当時は、Office Adminという事務全般を担当するポジションとして雇用されました。
その後、今の仕事とは全然関係ない国内営業を1年やりましたが、事業撤退とともに、今度は営業事務を1年経験しました。
その後、特別スキルがないわたしは、とりあえず、人手が足りない国内営業に配属となりましたが、OJTの間に大震災が起こって外出を自粛する時期が続きました。
その後は、せっかく英語ができるのだからということで、海外のカスタマーサポートの担当として仕事しました。
そんなわけで、わたしは、最初から海外事業開拓担当者としてハイヤーされたわけではなく、なんとなく、英語ができるし・・・というところから、あれよあれよと言う間に、海外担当にそれとなくなったわけなのですが、最初から、やりたいことをさせてもらっていたわけではありません。
幸い、わたしが勤める会社は、あまり細かいことを気にせずに、熱意を持って、自分なりに一生懸命リサーチをした上で、自分がやりたいことを提案すれば、チャレンジさせてくれる土壌があります。
もちろん、自分がやりたいことといっても、会社に利益をもたらすこと最優先にした内容を提案する必要はあります。
わたしは、海外事業担当者になりたかった。
権限と責任をもって、自由に考えて、仕事をしたかった。
ただ、自由に考えるといっても、その考え方とアプローチがさっぱりわからなかったのです。
事業戦略を立てるといっても、どうやって、どこから???と。
企業分析をする知識を身につける必要があると感じていました。
それで、チャレンジしたのがMBA。
組織とビジネス、そして企業のグローバル化の考え方とアプローチの仕方を学びました。
3年前にMBAを取得したわたしは、自分が2年間の学びを通じて研究してきたことを、自分がやりたいことを海外事業開拓の提案書という形で紙面に落として、社長にプレゼンしました。
おそらく、その時点では、経験ゼロのわたしの提案なんて、絵に書いた餅であり、たいした説得力などなかったと思います。
だって、現地の生の情報、一次情報なんて全然手元になかったし、あくまで社内データの分析と、ネットで集めた市場情報、そしてMBAの学びから得た知識だけの提案書なのですから。
仮説とも言えないぐらいの、勢いで出した提案書です。
それでも、海外での展示会や、単身出張、そしてもろもろのプロジェクトに資金を投じてやらせてもらえたのは、わたしの熱意と努力を認めてくれて、そこまで言うならチャレンジさせてあげようという親心に似たようなものなのではないかなと、今では思っています。
今でも、チャンスをくれた社長と会社に感謝しています。
そして、今は、恩返しも兼ねながら、自分の考えたことを実行することで結果を出すことを追い求めながら仕事をしています。
何より、ライフバイオサイエンスの企業ですから、病気で苦しんでいる人たちのお役に少しでも立てる自分になりたいものです。
自分ができる精一杯のことをやろうと心に決めて3年間仕事をしてきました。
専門知識もキャリアもないわたしは、専門知識を使って仕事をしている社内の人や外部の人の知識を借りながら、わからないなりにも一生懸命情報収集し、海外に出て仕事をしてきました。
その結果、今、少しずつですが、数字としてあらわれるようになりました。
なんとなく、良い風が吹いてきました。
専門知識がないからこその強み
海外事業における実績が、少しずつでも上を向いてきた今日この頃ですが、つい先日、社長から頂いた言葉があります。
「あれだよね、〇〇さん(わたし)は、専門知識がないから、上手くいっているんだよ。」
「これね、下手に専門知識があったりすると、素直に学ぶ気持ちに、はなかなかなれないからね。」
「専門知識がないからこそ、現地の人から学ぼうという気持ちが出て、それが功を成しているんだよ。」
目からうろこ、でした。
というより、専門知識がなくても、現状、良い方向に向かっていると社長も感じ取ってくれていることが、何より嬉しかったです。
専門知識がないからこそ、謙虚になれる、学ぶ気持ちになれる強みがあるということを、社長から教えていただきました。
とは言え、やはり自分では、専門的な知識を身につける努力は必要だと感じています。
まだ、道端に咲くタンポポぐらいの大きさしか花を咲かせられてないけど、いつか、大輪の花を咲かせられるように頑張ろう^^
一日、一日、牛歩でも、例え道中、スゴロクのように振り出しに戻っても、前に進めるようにがんばりたいなって思います。
byちびまる