- 兄がうつ状態に。
- 兄の話を聞く
- 人事部に手紙を書く
- 労働基準局に電話相談
- 理路整然に話をする大切さ
- 人事部の早い対応に感謝
- 企業側の対応結果
- 恐怖は人を狂わせる
- 幸い兄は回復
- 言葉にしなければ、伝わらない
- 誤解が解けて復職できることに
- 兄から始めてもらった花束
兄がうつ状態に。
1か月前の早朝6時半頃、兄から不在着信が2回ほどありました。
最近のわたしは、4:50に起きて、温泉で一風呂浴びてから出勤するのですが、ちょうどお風呂から出た頃、兄からの電話に気がつきました。
普段、わたしに電話なんてかけてこない兄の不在着信。
それも早朝だなんて、母に何かあったのかと、ドキドキして折り返しかけたところ、そこには、まともに話ができる状態にない兄がいました。
完全にパニック状態の兄。
どうしたのかと聞くと、「もう、会社、辞めたい、辞めてもいいかな。」と、なんとも言えない心細い、か細い声で、まるで怯えている子供のような感じでした。
職場の上司に思いっきり怒鳴られ、委縮し、パニック状態に陥ってしまって、「会社辞める」って言ってきて、会社を飛び出してしまったと。
きっと、お金のことが心配だったのでしょう。
兄は今年で78歳になる母と同居しており、とても楽な暮らしとは言えません。
母には言えなかったのでしょう。
兄はわたしより3つ上で、今年で54歳。
いろいろわけあって、現在もアルバイトです。
手取りで10万円あるかないか。
それでも、なんとか自宅に生活費を入れて、頑張って生きてきた兄。
詳細は割愛しますが、兄は、長年、精神障害に苦しみ、ここ数年やっと、なんとかやっていける職場を見つけ、6年間ほど無遅刻・無欠勤にて元気にお仕事をしていましたが、今年になって新しく配属になった上司とウマが合わず、うつ状態に陥ってしまいました。
兄はわたしとちがって、とても繊細で、子供のような純粋さを持っているがゆえ、他の人にとってはたいしたことがないことであっても、簡単に傷ついて、壊れてしまうのです。
わたしに電話をしてきたということは、かなり困って、誰も頼れなくて、かけてきたんだなと思いました。
これまで、兄のことは、すべて母に任せっきりで、何もしてこなかったわたし。
今回は、家族の一員として、ちゃんと向き合うことにしました。
兄の話を聞く
ひとまず、兄が落ち着くまで、話をひたすら聞くことにしました。
兄は動揺し、パニックとなり、まったく平静ではないため、イマイチ何を言っているのかわからないところもありましたが、話を聞いているうちに、本人も少し落ち着いてきて、「少し楽になった」というので、ひとまず良かったです。
その後、会社でどんなことがあって、精神が乱されたのかを丁寧に聞いていくと、どうやら、会社の上司にここ1か月間、大声で怒鳴られたり、仕事の指摘を何度もされたりして、気が滅入り、本人も知らず知らずのうちに、「負のループ」に入ってしまい、完全に被害妄想に陥っていました。
最初は、兄の話だけしか聞いていなかったので、「なんてひどい上司、それ、パワハラじゃん!」と思ったのですが、兄の話も、聞けば聞くほど、二転三転し、「ん?何が真実?さっきと話が違うけど・・・」と、わからなくなりました。
わたしは仕事柄、どちらかというと企業側に立ち、労務問題と向き合う立場ですので、今回の兄のケースは、従業員側の立場なので、自分にとってプラスになる学びと思い、ガッツリ関わることにしました。
結論、企業側と従業員側の当事者の話をよ~~~~く聞かないと、真実は見えてこないということがわかりました。
人事部に手紙を書く
兄がまともに対応できる状態ではなかったので、わたしが親族代表という立場にて、会社の本社・人事部に正式な書面によるお伺いを立てました。
一応、実家の住所を使い、わたしの個人情報は人事部ご担当者様のみに留めて頂き、社内であっても他の社員には共有しないようお願いしておきました。
会社宛の手紙は、5回書き直し、なるべく客観的かつ中立な視点の内容に努めました。
最初の手紙は、完全に企業を訴えるような印象でしたが、わたし自身も客観的な視点を持つのに苦労をしました。
最終、会社宛に出した手紙は6回目のドラフトで、なるべく感情は含めず、兄からヒアリングした内容(誰がいつ何を)とし、企業には下記3点の相談をしました。
1.職場でのヒアリング
2.当事者からヒアリング
3.復職と配置転換のお願い
手紙で気を付けたのは、企業側を責めないこと。
兄の証言はあくまで兄から見た視点であり、相手方当事者(職場の管理者)の声も必要であったため、双方の言葉を聞いて事実確認ができるまでは、「パワハラ」という言葉を使うことを避けました。
わたし自身、現職では企業側の立場なので、従業員の親族から手紙が届いたら、それも診断書付きで届いたら、そりゃ~構えるでしょ!と思ったので、なるべく、人事部の方が変な防御をはらないよう、安心してお仕事して頂けるよう、配慮しました。
労働基準局に電話相談
一方で、兄が住む町の労働基準局に電話し、パワハラ認定と労災認定について学びました。
労働基準局に電話をかけて、何を相談したかも、企業側には伝えました。
また、企業側には、私たち親族が企業側を訴えるようなことはしないとも伝えました。
厚労省のパワハラ認定に関する情報もくまなく読み込み、勉強しました。
結論、パワハラ認定を受けるには、かなりの条件が揃わないと高強度と認められず=パワハラ認定はされず、また、労災認定も最低でも1年ほど、職場でのヒアリング、本人のヒアリング、企業の体制など労働基準局による調査により時間がかかり、認定されるケースはたったの3割程度とのこと。
なので、パワハラを受けたと労災申請しても認定されないケースが多い、よって労災申請しない人が多く、うつ状態で失業状態に突入する場合、もっとすぐにお金を手にできる、疾病手当という制度を利用する方が多いとのこと。
労働基準局も、親身に話は聞いてくれますが、結局のところ、どんなに突っ込んで相談してみたところで、確信に迫る回答は一切くれません。
要するに彼らも下手なことは一切言えず(当たり前ですが)、お役所的な助言に徹するので、欲しい回答はくれませんので、参考にする程度です。
理路整然に話をする大切さ
労働基準局の話を聞いて、企業と戦っても仕方がないし、兄にとっても、慣れた職場に安心して復職できる条件を揃える方が得策と思いましたので、わたしは、企業側の人事部を味方につける戦略に出ました。
企業を責めず、客観的な視点で協議をしながらも、兄が復職しやすいように、今回の事象について理論武装は抜かりなく、お手紙にて、要望を出しました。
また、兄の精神が壊れた主な要因になった当事者同士の会話・やり取りを時系列に、できる限り明瞭に記載しました。
人事部の早い対応に感謝
手紙を出すまでは、どういう会社かよくわからなかったので不安でしたが、上場企業でしたので、変な対応はしてこないだろうという自信はありました。
さっそく本社の人事部より電話がかかってきまして、当方の要望のひとつであった、職場での全職員対象にしたヒアリングについて実施してくれ、その結果報告を受けました。
また、当事者の管理職の方にもヒアリングをして頂き、その結果をすぐ連絡くれました。
アルバイトという立ち場である兄の問題に、企業の人事部の方が、迅速に行動してくれて、真摯に対応してくれたことについて、素晴らしい企業だなと思いましたし、何よりありがたかったです。
企業側の対応結果
結果的に、当事者の管理職の方には、まったく悪気はなかったようで、また、大きな声で怒鳴ってしまったことについては本人も自覚があったため、本部から厳しく注意喚起を受け、本人も反省しているとのことでした。
ご本人は愛社精神が高く、また仕事熱心でもあり、それゆえ、バイトとはいえ6年間もその業務に携わっていた兄の仕事ぶりが、その上司が考える仕事水準に達していなかったことに対して、思わず感情的になってしまい、怒鳴ってしまったとのこと。
どのような状況下にて怒鳴ってしまったのか、それについてもヒアリングをして頂き、その結果を兄にも伝えることで、言った側と受け取った側の双方のボタンの掛け違いがあったことがわかりました。
恐怖は人を狂わせる
人は恐怖に支配されてしまうと、悪い方、悪い方に考えてしまって、挙句の果て、まったく真実ではない被害妄想をしてしまうこともあります。
結局、兄の場合も、あまりの恐怖と心配で、とんでもない被害妄想を描いてしまい、自分で自分を勝手に追い込んでしまったという結果に。
今回の兄のケースで、人間の弱さ、脆さを学びました。
人は心が大きく傷ついてしまうと、どこまでも傷ついて、どこまでも弱ってしまいます。
企業側の話の全てが真実とは思いませんが、少なくとも、うつ状態になった従業員の親族に嘘をつくことはできないでしょうと私自身思っていましたので、企業の人事部の方が真摯にご対応してくれ、その結果を伺って、兄にとっても学ぶ機会だと思いました。
企業とのやりとりに1ヶ月ほど時間を要しましたが、最終的には当事者2名とその上の管理職の方(第三者)と3者面談をして頂けることになりました。
幸い兄は回復
幸い、兄はわたしが企業側とやり取りをしている間に1ヶ月ほどゆっくり自分を見つめて、休養を取る機会を頂けたので、しっかりご飯も食べ、睡眠もとることができ、また、平静を取り戻し、復職したい気持ちが出てきてましたので、わたしは順を追って、兄に状況を説明しました。
口頭の言葉だけでは流れてしまうので、わたしなりに、事実をベースに、できる限り客観的かつ公平な視点で、状況を説明する文書を兄宛にに出しました。
その結果、兄も、自分が誤解をしていたことに気が付くことができ、その後、無事に3者面談を終え、円満に復職できる運びになりました。
これまで、どこの職場にいっても同じような人間関係で苦しみ、体調に大きく影響が出るほど精神的に追い詰められた兄ですが、今回の件で、ひとつ、自分の壁を乗り越えるきっかけになったのではと感じてます。
言葉にしなければ、伝わらない
わたしのように、何でも思ったこと、感じたことなど言葉にできるタイプは、それなりに世間で頭をぶつけては、転ぶ機会も多いので、ちょっとずつ痛い思いを繰返し、心を鍛える機会を得られるので、兄のように心が壊れることはそうそうありません。
でも、兄のように、なかなか自分が思っていることや感じていることを言葉にできずに、抱え込んでしまうタイプは、誤解されることも多く、また、相手を誤解することも多く、ある日突然ガラスの心が壊れてしまいます。
わたしは兄ではないから、兄の本当の気持ちはわかってあげることはできませんが、ひとつ言えることは、やはり、自分の考えや気持ちを言葉にしないと、なかなか他人には伝えることができないということ。
言葉にして、想いを伝えることの大切さを改めて学びました。
誤解が解けて復職できることに
兄も相手方の上司も、それぞれ思いを言葉に乗せて伝えたことで、分かり合えることができ、仲直りすることができました。
お互い笑顔で、また、一緒にお仕事ができるということは、なんと素晴らしいことでしょうか。
妹であるわたしも、ほっと一安心ですし、上手くいくといいなぁと願っています。
でも、これから先、また、同じようなことが起こるかもしれません。
そのことを踏まえて、わたしは兄に手紙を書き、妹として想いを伝えました。
相手が自分に対して怒っているということは、少なからず自分にもその原因があるということを忘れないでほしいということ。
でも、相手が起こっているのは、たいていの場合、自分の人間性に対してではなく、自分の行動や言動に対してなんだと。
だから、自分という人間を否定されていることではないんだよと。
兄は、わたしにはない素晴らしい能力をたくさん持っています。
それは、まわりの人が自然と寄ってきて、気軽に話しかけてくるということ。
それは兄の優しい人間性であり、声をかけやすい、相手を受け入れる雰囲気であり、だから、周りの人は兄に話かけてくるんだよと。
わたしにはない、兄の魅力がそこにあります。
そのことを、どうか忘れないでほしいです。
わたしは兄のようにはなれないし、兄もわたしのようにはなれない。
だって、兄弟だけど、違う人間なのだから。
でも、それでいい、それがいいいのです。
兄から始めてもらった花束
今回の一連の騒動がひと段落して、兄から花束を頂きました。
兄からお花を頂くなんて、人生初です。
ネットショッピングもできない兄は、母から近所の花屋さんの名前を聞いて、直接花屋さんに出向いて、わたし宛にお花を送ってくれました。
花キューピットです。
宅配便ではなく、地元の花屋さんが直接お花を届けてくれるんですね^^
とても良い薔薇の香りがして、とても幸せな気持ちになりました。
たったひとりの兄弟、どんな形でもいいから、兄には幸せに、そして健やかに生きていて欲しいものです。
他の人と比べる必要なんてないのだから、とにかく、本人が幸せで、特に心豊かに生きていてくれたら、そう願って止みません。
そして、お母さんを大切にしてほしい。
だって、母が一番の兄の味方なのだから。
普通が一番、平凡が一番。
お兄ちゃん、have a good life!
by ちびまる